ネルソン・フレイレを聴いたのは多分2005年頃、
パリのシャンゼリゼ劇場でのリサイタルだった。
確かショパンを中心としたプログラムだったのだが、本人の調子が
悪かったのかハラハラする演奏で聴き疲れてしまった思い出が。
しかしこの度の来日公演で素晴らしい演奏を聴かせてくれて
すっかりファンになってしまった。
一度聴いたぐらいで判断してはいけないのだなぁと思う。
まずはすみだトリフォニーホールでのリサイタル。
知り合いから譲り受けたチケット、前から4列目の至近距離。
どの曲もピアノを力ずくでならそうとはせず、あくまでも美しい音色。
2階で聴いていた知り合いは「あんなに力を抜いて弾いて!」と言っていたが
遠くで聴くと物足りない印象をあたえるかもしれない。
2千人規模のホールでは万人に丁度良い鳴り加減というのは難しいものだろうと思う。
バッハの編曲もの、シューマンの幻想曲、ヴィラ=ロボスの小品、
ショパンのソナタ3番のプログラム。
YouTubeなどで見ても、私が以前聴いた演奏にしても弾き飛ばす
イメージのフレイレだったが、72歳を迎えて技術的にも音楽的にも
円熟まっただなかの完成度が高く香り高い演奏。
それぞれの声部が独立して有機的に絡み、フレイレ特有のさっぱりした
音楽の運びと相まって音楽に引き込まれた。
狙った表現やわざとらしさは一切なく、少年のような純粋な音楽。
ミスを恐れること無い思い切った弾きぶり。
72歳にしてこういう音楽が出来るのかと目から鱗でした。
あんまり感激したので3日後のコンチェルトも当日券で聴いた。
残念ながら3階席。
ブラームスのコンチェルト2番は演奏時間が長く、また重たい演奏が多いため
あまり積極的に聞きたい曲ではなかったが、この日は別。
フレイレの軽やかでチャーミングなブラームス。
やはりミスを恐れない思い切った演奏とスピーディな指さばき。
この曲の難しさを考えるといつも気が遠くなるばかりなのだが
それよりもこの曲の魅力が存分に伝わる演奏だった。
72歳、まだまだ活躍して欲しい演奏家。
2017年7月10日月曜日
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