私がフランスへ留学するきっかけとなったアンリ・バルダ先生。
彼のレッスンに行って誰もが驚くのがどんな曲でも
移調させられることでしょう。
毎日同じ曲を練習していると慣れで弾いてしまうので
新鮮な耳で聴くために移調をするのです。
特にピアノを専門にしていると絶対音感がある場合が多く
音程をあまり意識しないで手や楽譜の記憶のみで
弾いてしまう傾向があります。
移調すると原調の色彩感覚が失われることはあるかもしれませんが
そのデメリットを超えて新しい発見が沢山あります。
まずいつも当たり前に弾いていたのに移調すると次の音が分からなくなる。
これは音程を意識せずに弾いているからですね。
バルダの移調方法は楽譜を見ないで耳で音を探しながら行います。
なので分からなかった次の音が見つかると音の前後の関係性に
ついて考え、その結果よく頭に刻み込まれるのです。
えー、こんなに遠くに移調していたのか、など。
作曲家はよくこんな音の配列を考えたものだなぁと感嘆の連続です。
クラシックのものだとそれでも慣れてくると割とすぐ移調できるように
なるのですが、ロマン派以降の作品だと大変。
私が移調して大変だったのはラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」でした。
最初の和音からして分からない・・・。
結局時々楽譜を見てやっと全てを移調することが出来ました。
でも移調した後は原調で弾いた時とても新鮮な耳で聴くことが出来て
その後の演奏に役立ったと思います。
時間のかかる練習なのでつい敬遠しがちですが
今弾いているラヴェルのソナチネでそろそろやってみようかな。
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